2017.12.08
インタビュー

生まれ変わったアルミバンパー デザインディレクター、山岸隼人氏に聞く 「Virtue」、「Ellipse」が生まれるまで

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限りなくベゼルが薄い、全面ディスプレイを採用したiPhone X。2017年秋、新たなデザイン、機能を実現してiPhone Xは新たな道を歩み始めた。それに合わせるように、Deff(ディーフ)もまた、アルミ製バンパーを中心に新たなラインナップをリリース。次のステージに歩を進めている。

 

アルミバンパー、Cleave(クリーブ)シリーズで一世を風靡したDeffは、新シリーズを始めるにあたり、デザインディレクターに山岸隼人氏を迎えた。自身のスタジオ「HYT-DESIGN」を主宰し、一線で活躍し続けている山岸氏はDeffに何をもたらしたのだろうか。

 

 

「原点回帰」することで、気づいたアルミバンパーに求められていること

 

山岸隼人氏がDeffに参加したのは、2016年12月のこと。すぐにさまざまな商品のデザイン、開発に取りかかったが、その中心はやはりDeffの代名詞的な存在であるアルミバンパーの見直し。人気アイテムとして、すでにイメージが固まっているものだけに丁寧に作業を始めたという。

 

「Cleaveシリーズは、ファンがついている商品です。リニューアルは新しい『何か』を盛り込んだものでありながら、熱烈なファンに愛されるものでなくてはならない。難しい仕事です。まずコンセプトをもう一度、精査することにしました」

 

完成の域にあったアルミバンパー。新たにデザインする際に考えたのは「原点回帰」だった。アルミバンパーに求められているものは何か? 原点に立ち戻り考えた結果、それは「スマートフォンの保護性能」であることに気づいた。

 

「しっかり保護できる形状であること。大型化するスマホをしっかりホールドできること。そして最新のiPhone Xの特徴である背面のガラスパーツが持つ質感を見せることが可能なこと。これらのポイントに留意してデザインを練っていきました」

 

特殊な工具や部品を使わずに簡単に装着できるQuickLock方式といったDeffの熟成された技術は残しつつも、新しい構造やアイデアを盛り込みつつも試作を繰り返して、デザインをブラッシュアップ。その結果、誕生したのが「Virtue(ヴァーチュー)」「Ellipse(エリプス)」というふたつの新しいシリーズだった。

 

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現在、Deffでデザインディレクターを務める山岸隼人氏。

 

 

イメージを現実のものにしたふたつのアルミバンパー

 

「Virtue」と「Ellipse」はデザイン的に対照的な印象を持つバンパーのシリーズだ。「Virtue」は、エッジの効いたシャープなデザインに、「Ellips」は楕円形状を押し出したシンプルで洗練されたデザインに仕上がっている。

 

「『Virtue』は、湾曲したひとつの線をベースにデザインされています。その結果、滑らかな曲線を持った形状が生まれました。そこで生まれた大きな面で陰影がでるようにしています。また、エッジが効いたアイコニックなデザインを活かすために、ボタンやラッチはiPhoneの形状に合うように調整されています」

 

「一方、『Ellipse』はシンプルで飽きがこない洗練されたデザインを目指しました。一体感のある形状になるように、側面のボリュームボタンやロックボタンが面から出たり、引っ込んだりしないようにしています。これにより『Ellipse』はより滑らかな形状になり、適度なグリップ力とシャープすぎないデザインにまとまりました」

 

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山岸氏がデザインを担当した「Virtue(ヴァーチュー)」。シャープなスタイルが印象的

 

 

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山岸氏がデザインを担当した「Ellipse(エリプス)」。楕円形を強く押し出したシンプルな印象になっている。

 

ふたつのバンパーは、対象的な印象の形状に仕上がったが、「原点回帰」で気付いたスマートフォンの保護性能という点においては共通するところも多い。いずれも、装着したバンパーがわずかにせり上がることで、平らなところにおいてもiPhone本体がデスクに触れないようになっており、すり傷がつかない。また、重心位置を下げることで、デスクに置いてもiPhoneが揺れず、さらに片手で持ち上げやすいように側面は指がかかりやすい形状になっている。

 

デザイン的に、「Virtue」と「Ellipse」はいずれも装着してもひとつの「カタマリ」になるよう工夫されている。先にも触れたが、ボタンやラッチはバンパー本体とぴったりと面が合っている。ここまでの精度を出すのは大変なことだが、Deffの高い技術力が可能にしてくれた。

さらにもうひとつ、共通点がある。それは「Virtue」と「Ellipse」はいずれも「イメージありき」でデザインされたバンパーだということだ。

 

「私の場合、大きくふたつのデザイン方法があります。ひとつは必要な機能から考える方法。バンパーの場合、持ちやすさやスマホの保護機能といったポイントを先に考えて、それらを組み合わせながらカタチにしていくというものです。もうひとつが、イメージを現実のものに落としていくという方法です。最初に思い描いたイメージを損なわないよう、持ちやすさといった機能をデザインに織り込んでいきます。『Virtue』と『Ellipse』は、こうしたい、というイメージが先行しました」

 

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スマホの保護性能や「手当たり」などデザインに際して,考えなければならないことは多い。

 

ちなみに、必要な機能から考えてデザインされたシリーズが「eS」となる。現在、AQUOS sense用のアルミバンパー「Cleave Aluminum Bumper eS for AQUOS Sense」のみ発売されている。

 

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機能優先でデザインされた「eS」シリーズは現在、AQUOS sense用のみ。

 

 

OSや操作方法の変更もデザインに影響を与える

 

もちろん、デザインを進めていくにあたり苦労したこともあるという。

 

「Deff製アルミバンパーのデザイン的なアイデンティティーである、シャープな部分とカーブが両立する形状。この特徴を持ちつつも、また違うデザインを考えなければならない点に最が苦労しました。また、『手当たり』も重要で、シャープなデザインの金属製バンパーは、どうしても触った時の感覚も鋭く硬いものなってしまいます。デザインイメージを変えずに、その感覚を減らしていく必要がありました」

 

スマートフォンの大型化が進み、片手での操作が難しくなっている傾向にある。さらにバンパーを装着すると、スマホはもっと大きくなる。それでもバンパーは、持ちやすく使いやすい形状でなければならないという。また、OSの作法も重要だ。

 

「スマホはパンパーを装着したまま、操作するものです。片手で持つ場合も、両手で持つ場合もあらゆる操作がスムーズにできなければなりません。バンパーを装着することで、上のほうが触りづらくなった、なんてことになってはいけないのです。特にiPhone Xはホームボタンがなくなったことで、操作方法も変更されました。ユーザー自身が不慣れなiPhone Xの操作を邪魔しないか、という点に気を配りました」

 

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両モデルともに操作性にも考慮されたデザインとなっている。写真は「Virtue(ヴァーチュー)」

 

コントロールセンターの表示が、従来の下から上にスワイプではなく、右上から下にスワイプへと変更。Apple Payなどを使う場合、これまではホームボタンに指を当てる指紋認証から電源ボタンのダブルクリック、そして顔認証に変わった。iPhone XとiOS 11の登場による操作感の変化はバンパーの形状にも影響する。

 

微妙な修正、変更を繰り返して、完成した「Virtue」と「Ellipse」。

 

「Deffはモノづくりに対する姿勢が、とても柔軟で会社で試作や提案を通して、さらにおもしろい製品を出していければと考えています。特にアルミ製品は試作が届くのが早く、またクオリティも高い。Deffが持つモノづくりの知識と技術を活かしていきたいと思っています」

 

 

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プロフィール

山岸隼人 HAYATO YAMAGISHI

1979年生まれ。幼少期をオランダとアメリカで過ごし多摩美術大学プロダクトデザイン専攻を卒業。照明器具メーカーでプロダクトデザイナーとして勤務後、2001年にHYT-DESIGNを設立。2014年より多摩美術大学非常勤講師、2017年よりDeffデザインディレクターも務めている。

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